陸揚げ後、製紙工場に送られる丸太はコンベヤ上に無秩序に落下するので、長手方 向に向きをそろえる必要がある(図1)。向きをそろえる機器は複雑で大きな床面積を占有し、信頼性も低い。シンプルで信頼性がありコスト効率の良い丸太そろえの方法が必要である。どうしたらよいか。解決策として、サイドのコンベアを逆向きに動かし、丸太の向きをそろえる。そして、中央のコンベアで、長手方向に向きのそろった丸太を移送する(図2)。(参考文献:実際の設計研究会編「TRIZ入門」日刊工業新聞社)


図 1.丸太が一定の向きにならない


図 2.2つのコンベアを逆方向に動かす

【思考演算の説明】
 まず、問題を最小問題として捉える。すなわち、システムに大変更を加えずに丸太の向きをそろえると定義する。つぎに、システムの対立事項として、丸太の方向を決めるには向きをそろえる機器が必要だが、システムが複雑化すると定義する。 問題のモデル化として、既存のシステムのいずれかの要素が、向きをそろえる機能を分担すべきである、と考える。そこで、対立領域とリソースの解析とおこなう。対立領域はコンベヤの表面、唯一のリソースはコンベヤである。理想解としては、「コンベヤ自身が丸太の向きをそろえる」ことになる。しかし、物理的矛盾として、向きを変えるにはコンベヤ表面の異なる位置では異なる速度でなければならないが、移送するためにはコンベヤ表面は一様な速度でなければならない、ということがあげられる。次に、物理的矛盾の除去をおこなう。対立する要求を、システムとその構成要素とで分離する。つまり、コンベヤ全体は生産ラインの速度で動くが、その一部を異なる速度で動かす。