航空機の外板構造の熱応力は望ましくないものである。熱変形の補償は通常、航空機の外板区画の間に小さな隙間を設けることで行う(図1)。表面を滑らかにするために、高分子を基材として、粉末化したニッケル、銀、金などを含むシール材(ペー スト)を用いてこの隙間を埋めている。ペーストで隙間を埋める作業は重労働で時間 のかかるプロセスである。
 どうしたらよいか。この問題に対する実際の解として、隙間にパチンと はまり非常に簡単に取り付けられる、弾性的リテーナに金属のキャップを付けたものが 提案された(図2)。(参考文献:実際の設計研究会編「TRIZ入門」日刊工業新聞社)


図 1.ペーストですきまを埋めると熱応力が生じる


図 2.弾性的リテーナ(金属キャップ付き)構造

【思考演算の説明】
 この状況の問題点はシール材に起因したものである。理想的なシール材とは何であろうか?それは明らかに「存在しないシール材」である。シール材がなければ、パネル間に流し込む生産プロセスは不要になるが、同時に航空機の外板の空力特性を損なう。シール材はパネル間の隙間の表面を覆うことができればそれで十分であり、隙間を埋めるプロセスを容易にしながら、航空機外板の空力特性の低下を防ぐことができる方法として、解を考える。