戦前のロシア、それもアルトシューラーが育ったバクーでの話である。ある年の9月に、トランスが故障してしまった。町中が停電になり、不便このうえない。しかし、トランスは今も昔も鋼板の固まりで重い。悪いときには悪いことが重なるもので、その時、すぐにクレーンがチャーターできなかった。電気技師はまず、図1に示すように、高い土台の上に設置されたトランスを降ろしたい、と言っている。さてどうすればよいか。図2に示すように、土台と同じ高さに氷を積み上げ、トランスを土台から氷の台にてこで移した。次に氷には布をかけておき、9月の太陽で全体を暖めながら、氷を溶かし、トランスを降ろした。(参考文献:中尾政之、畑村洋太郎、服部和隆「設計のナレッジマネジメント」日刊工業新聞社)


図 1.変圧器を土台から降ろしたい


図 2.氷で変圧器を降ろす

【思考演算の説明】
 アルトシューラーの隣人である簿記係のおじさんが、この答をだした。氷は、ものを冷やすためにあるだけでなく、クレーンの代わりもするんだと、小学4年生のアルトシューラーはすっかり感動した。