片持ち梁の自由端下部を押すと、図(a)に示すように、固定端に向かって力線が走る。走っていない自由端上部は“昼寝(力を受けるという働きを何らしていない)”をしているから、“肉を盗む(剛性に寄与していない部分を除去すること)”のは容易である。図(b)の三角形の梁も同様である。力線の通らない真ん中に穴を開けても、剛性に大きな違いはない。流線が疎の部分で肉を盗み、徹底的に全体重量を軽くしたのが零戦である。零戦は第二次世界大戦直前に日本が開発した戦闘機であるが、剛性を落とさずに軽量化に成功し、米軍機よりも小さな馬力のエンジンを用いたにもかかわらず、空戦能力に優れていた。(参考文献:中尾政之、畑村洋太郎、服部和隆「設計のナレッジマネジメント」日刊工業新聞社)


図 肉を盗む場所

【思考演算の説明】
 流線が頭の中で見えてくると、いろいろなことがわかってくる。本例のように、力線が見えれば“昼寝の場所”がわかってくる。