金型の温度管理は、凝固を制御するためによく行われる。図は、金型に熱電対を入れた時の、等温度線・熱流束線を示したものである。熱電対は無限に細くはできない。素線では直径数10μm、シース線では直径1mm程度が最も細い。それを金型の裏面から熱の流れに沿って入れると、図(a)に示すように熱が水流の中に円柱を置いたように流れる。金型の方が熱電対より熱が流れやすいし、穴を開けると回りの空気が断熱材になるので、ますます熱流が金型を流れる。熱電対は冷却されないので、同じ表面深さでは温度が高くなる。ところが多くの場合、熱電対を穴につっこんで適当にカーボン伝熱セメントや銀ペーストで隙間を埋めても、まだ空気が残っているから、図(b)に示すように、熱流がまわりに逃げ、空気層が大きな温度勾配を常に作っているので、熱電対は同じ表面深さで温度が低くなる。真空容器ではそれが顕著になり、10μmの真空の隙間があっても100℃以上の温度差が生じる。 (参考文献:中尾政之、畑村洋太郎、服部和隆「設計のナレッジマネジメント」日刊工業新聞社)


図 金型温度を熱電対で測るときの熱の流れ

【思考演算の説明】
 本例のように、熱電対で温度を測る場合、有限の大きさの熱電対を挿入した時点で場を乱してしまい、熱電対の有無で測定系が異なってしまう。