構造体で生じる圧縮は引張に、引張は圧縮に変わるように形状を設計し直すことはよく行う。特に、圧縮では座屈が生じるので、引張に変える。たとえば、図に示すように、テーブルに“不釣り合いおもり”を付けたモータを配して、振動させる場合、たわみ柱を図(a)のように立てると、たわみ柱に圧縮が働き、時には座屈が生じる。この場合、図(b)のように上からたわみ柱を垂らすと柱に引張が生じるようになる。図(c)(d)は、ピエゾ素子の変位をてこで増幅しようという形状である。図(c)ではピエゾが伸びると、短い支点が押しつぶされて、そこに大きな圧縮が生じる。そうすると支点が曲がることで、5倍は変位が増幅されるはずなのに、実際は2倍も変位しない。この時は図(d)のように支点に単純引張が生じるように形状を変え、支点を長くして、小さな応力で曲がるように設計する。そうすると5倍の増幅が実現される。(参考文献:中尾政之、畑村洋太郎、服部和隆「設計のナレッジマネジメント」日刊工業新聞社)


図 圧縮を引張に変換した構造

【思考演算の説明】
 構造体の作用を交換することで、本質的な機能を満足する機構が構成できるケースである。