回転型のロボットの関節は,相互に排他的な機能を果たさねばならない(図1)。駆動モーターを小形化し、かつ/または、より大きなペイロード(負荷能力)を得るために、アームは(与えられた形状に対して)軽量でなければならない。しかし 、軽量な素材は一般に十分な剛性(ヤング率)が得られない。一方、アームの先端の変形を減らし、起動/停止時の安定時間を短くするためにアームの剛性は高くなければならない。しかし、剛性の高い素材は一般に重い。 物理的矛盾は、「アームは軽量でなければならないが、重く(高剛性で)なければならない」ことである。ここで、簡単な分析により、アーム先端の変位は、アームの付け根の部分(曲げモーメントが最大で、突起長さが最大)により決まる。一方アームの慣性モーメントは主に張り出し部分により決まる(図2)。したがって、対立する要求が空間で分離されている。したがって、この物理的矛盾は、アームを二つの部分で構成すれば解決できる。アームのモーメントにあまり大きく影響しないが、その剛性を決定づける付け根の部分を高いヤング率を持つ材質(たとえば鋼)で構成する。一方、剛性にはさほど影響しないがモーメントを決定づける突出部分を軽量にする(たとえばアルミニウムを使う)。 (参考文献:実際の設計研究会編「TRIZ入門」日刊工業新聞社)


図 1.高剛性と軽量化の両方が干渉する


図 2.棒の先端と根元で材質を分ければよい

【思考演算の説明】
 反対の特性をシステムとその構成要素で分離する:あるシステムが特性Pを持ち、 その構成要素が反対の特性−Pを持つ。なお、アームを軽量にする方法として、中空構造にすることも有効で実際に多く採用されている。