車両の軽量化と高トルク化のニーズで、駆動歯車の高強度化が求められる。駆動歯車の歯面強度改善には、表面から100μm程度深くはいった位置が剪断応力が最大になるのだが、その内部から壊れる内部起点破壊と表面粗さやスクラッチに依存する表面起点破壊との両者を考慮する必要がある。このとき、粒径の異なる2種のショットピーニングを施す複合ショットピーニングを実施すると、歯面疲労強度の大幅な改善が可能となる。具体例として、ショット径φ1.1mmでショット後に、φ0.3mmのショットを施した。図1のように、表面から200μmの深さまでの残留圧縮応力と、表面粗さRz1.6〜5.0μmとの両方が実現できた。この結果、図2のように、浸炭のままに比べ、95%以上の大幅な疲労強度向上が図れた。


図 1.複合ショットピーニングによる残留応力改善例


図 2.複合ショットピーニングによる疲労強度改善例

【設計のアドバイス】
 大径ショットによる深い残留圧縮付与と、小径ショットによる表面粗さの改善という、2つのショット条件を使い分けたことで、2つの要求を満足できた。ショットピーニングの機能を明確に分けたことで、新しい工法が得られた例である。