建設機械の履帯に使用している高張力ボルトが、稼動していないにもかかわらず、不完全ねじ部で折損した。原因として、不完全ねじ底Rが小さいこと、Zn(亜鉛)メッキが水分によって腐食したこと、焼き戻し温度が低いこと、などが推定された。


図 高張力ボルトの使用個所と不完全ねじ部

【設計のアドバイス】
 高張力ボルトを締結状態で放置しておくと、無負荷でも数ヶ月から数年でボルトの頭部やねじ部が脆性破壊する。これを遅れ破壊をいう。この対策としては、水との接触を断つことや陰極防食処理(Zn,Snメッキ)をさけること(環境因子)、熱処理後、転造し圧縮応力を発生させたり、不完全ねじ底Rを完全ねじ底Rより大きくすること(力学的因子)、焼戻し温度を上げ焼戻し脆性低下を防ぐ(材質熱処理因子)などがある。いずれも応力腐食割れの対策である。なお、高張力ボルトの遅れ破壊を考慮しなければならない場合は、目安として、ボルト材質が硬度HRc40以上、引張り強度1,200N/mm2以上で、同時に水と接触する場合である。