オイルシールの選定もシール摺動面の寸法精度も問題ないのに、運転を始めるとオイルが滲み始め、長時間後にオイルが滴下するほどにたまった。そこで新品のシールに交換し、停止中は長時間問題ないことを確認した上で、運転を開始すると再度オイルが滲み始めた。この時、軸は研削加工による、目視では認められない程度の微細な加工痕が表面に残っていた。回転を始めるとその微細な加工痕に沿って、微量なオイルが外部に滲み出た疑いが強い。つまりねじポンプのように、軸の回転に伴って微細なスパイラル溝に沿ってオイルが滲み出したのであろう。そこで対策として、機械加工の送りを逆にして、吸い込む方向に加工痕を形成してオイルの滲みを止めた。また方向性を持つ加工痕を残さない加工方法、たとえばプランジ加工と呼ばれる、コロを押しこんでバニシングする加工に変更した(図1)。なお、方向性のある機械加工痕がある場合、細い糸を摺動面に接触させて軸を回転すると、糸が軸方向に引っ張られ、その方向性を確認することができる(図2)。