オーステナイトステンレス鋼と炭素鋼の溶接では、炭素鋼のみ磁性があり、アークが炭素鋼側に偏りやすく、溶け込みが深くなる。電極の狙い位置をステンレス側にずらしたり、アースをステンレス側に取るなどの対応をする。厚板や重要な継手では、希釈率を安定させ異材界面の性能を保証するため、図のように、D309であらかじめ炭素鋼にバタリング溶接後、バタリング部とステンレス鋼を溶接する。また、予熱は母材の低温割れ防止のため、組合せ母材の条件温度の高い方を選ぶ。ただし、オーステナイト系の場合は、低温割れの危険性が少なく、予熱温度は低めでよい(表)。参考文献:「接合・溶接技術Q&A1000」産業技術サービスセンター、「新版接合技術総覧」産業技術サービスセンター、「接合・溶接技術」溶接学会編


図 バタリング法による異材溶接


表 異材溶接における予熱条件例

【設計のアドバイス】
 後熱は、ステンレス鋼側への炭素の拡散による脆化や炭素鋼側の軟化が生ずるため、原則として実施しない。どうしても必要な場合は、できるだけ低温とするか、高Niのインコネル系溶接材料を用いる。