鋼は水素を吸蔵すると、脆化し割れることがある。溶接後あるいは時間経過して、溶接金属および溶接熱影響部に割れが発生しする。また、めっきあるいは酸洗い処理した部品をそのまま組立し、静的荷重を負荷したままで放置すると、数時間あるいは一昼夜放置後、破壊を生じる場合がある。これは応力腐食割れと同様なものだが、水素脆性による遅れ破壊と呼ぶ。


図 めっきによる水素脆性破面例


表 水素脆性除去処理条件の例

【設計のアドバイス】
 溶接の場合は、被覆溶接棒、フラックスワイヤ、フラックスなどの溶接材料の吸湿防止や、鋼の種類に応じた低水素系溶接棒を使用する。溶接アーク中に水素が発生し、銅中に吸蔵される。割れ感受性は炭素量が多いほど、高張力銅になるほど大きくなる。酸洗いの場合は、浸潰時間を短くし、めっきや酸洗い後は、表のようなベーキングをすみやかに行う。また、鋼の硬度は極力低くする(HRC25未満)。溶融亜鉛めっきの場合、塩化アンモニウムをフラックスとして過剰に用いると、熱分解で水素が発生し遅れ破壊を引き起こす。