中炭素(0.30%)以上の鋼は、溶接のような急熱急冷の熱サイクルを受けると、母材の熱影響部が焼入効果によって硬化し延性が低下するため、図のような、ルート部やトウ部に割れが発生する。これは溶接冷却時に熱影響部にマルテンサイト変態が生じるためである。参考資料:(1)溶接力学とその応力(朝倉書店)(2)溶接学会論文集vol.2,No.3(1984)


図 ルート割れの伝播とトウ割れ


図 割れ感受性指数と予熱温度との関係

【設計のアドバイス】
 予熱は冷却速度をゆるやかにして、熱影響部の硬化を少なくし、熱応力の局部集中を緩和する。後熱は熱影響部の軟化や、溶接残留応力の除去にも効果がある。割れ防止のために、伊藤・別所らが提案した割れ感受性指数Pcから、下記の予熱温度を求める方法がある。
 割れなしの予熱温度To=1440Pc−392(℃)
 Pc=C+ Si/30 + Mn/20 + Cu/20 + Ni/60 + Cr/20 + Mo/15 + V/10 + 5B + H/60 + t/600
 H:溶接金属の水素量、t:板厚
 その他、種々の割れ感受性指数が提案されているが、適用範囲(鋼種、溶接方法など)で選択する。