自動車は軽量化というニーズによって、外装が薄板化している。薄板を指で押した時に起きる変形として、図1のように、デントによる変形と飛び移り(座屈)による変形との2種類がある。デントは、押した直後は塑性変形して、時間経過とともに弾性効果で元に戻るが、それでも残る凹み変形である。また、飛び移りは、図2のように、荷重―たわみ曲線に極大値と極小値がある場合に生じ、往路では荷重の増加とともにBからDに、復路では荷重の減少とともにCからAに形状が飛び移る。材料の降伏点を上げると、デントによる変形防止には効果があるが、飛び移りによる変形防止には効果が少ない。


図 1.薄板のデントと飛び移りによる変形


図 2.飛び移り変形の荷重―たわみ曲線

【思考演算の説明】
 飛び移り変形(飛び越しと呼ぶこともある)を、積極的に利用することもある。飛び移り後は荷重が回復して安定な状態(図2のCが下凹に大きい)になるので、石油缶のフタやキーボードのスイッチなど、クリック感を持たせた部品に使われる。