エンジンのコネクティングロッドは、ピストンとクランクシャフトを連結する部品であり、クランクシャフトの摺動軸受け部の真円度保証が重要である。ところが、クランクシャフトとの組付けのため、軸受け部を上下に分割して、ボルト締結する構造となっており、2部部品にまたがる穴加工の真円度を保証するには、高度な加工技術が必要である。2つの部品を各々個別に高精度で加工することなく、焼結で一体に製造したコネクティングロッドに穴加工した後、図のように、左右からくさびを打ち込んで分断する方法が海外で採用されている。切断すると刃物の厚みだけ直径が小さくなるが、割断すればその切り代は問題なくなる。ボルト締結後、破断面をかみ合わせることにより、くさびで割る前と同じ真円度を得ることができる。


図 くさびによる分割軸受け

【設計のアドバイス】
 「くさびで割る」発想は一見乱暴のように思われるが、材料の強度、破断特性を考慮した条件で行うと、安定した割れが得られる。また、真円度確保のための位置合わせに破断面が利用できるメリットも生まれる。

【思考演算の説明】
 割ったのを組んで穴加工するか、穴加工した後に割るのか、のちがいである。