車両には、薄板鋼板のプレス成形部品が多く使われている。プレス成形品は、ボルトで締結されるが、締結部の平面度が悪いと、ボルトがゆるむ恐れがある。ボルト締結構造では、ボルト軸力で結合する。ところが、図のように、平面度の悪い鋼板を締付けた場合、鋼板面密着のための変形抵抗や、鋼板面の片当たり部分のヘタリによって、軸力損失が発生し、外力によって緩みを発生する。したがって、締結面の平面度確保が重要である。


図 平面度の悪い締結構造の例

 平面度の悪い面を互いに密着させるために必要な締結力は、その変形抵抗力と釣り合って相殺される。このため軸力が鋼板面同士の間に作用せず、摩擦力も低下する。また片当たりした部分がへたると、ボルトの伸びが減少して、その結果、ボルト締付け力が低下する。

【設計のアドバイス】
 軸力損失は、隙間寸法、板厚、板材の弾性係数、降伏点、クリープ特性、面の歪み形状、上下の接触位置などが影響する。設計的に、不要部位を接触させず、座面のみを接触させることが必要である。また実験的には、軸力損失を実測したり、感熱紙を用いて均質な当たりであるか検証したりすることが有効である。