歯車を用いた動力伝達機構で、油浴給油式歯車ボックスがオーバーヒートした。油浴給油式は、油溜まりに浸った歯車が、潤滑油を跳ね上げ、直接またはケースなどを伝わって歯車、ベアリング、ブッシュなどへ潤滑油を供給する方式である。油溜まりでの歯車の攪拌損失が大きく、油温が上昇した。


図 油浴給油式歯車ボックス

 平歯車1段、遊星歯車1段の減速機である。図上部の入力軸とスプライン結合したピニオンによって平歯車が回転し、図下部で潤滑油を跳ね上げる。油溜まりに仕切り板を設け、潤滑油全体を攪拌することを避ける。また、仕切り板の底部に穴を設け、溜まった油は出入り自由としている。

【設計のアドバイス】
 油浴給油式歯車ボックス設計の留意点は以下のとおり。@ 潤滑油を跳ね掛ける歯車の全速度域で、各部に油を供給できること。A 攪拌の量は潤滑に必要最小限とする。B ベアリング部など各部に小さな油溜まりを設け、長時間休止し潤滑油が滴下しても、ドライな状態にならないようにする。どのくらいまで油をいれるかは各社各様であるが、だいたい平歯車の1/5程度がかくれるぐらいであろう。本例では高速のためかレベルは非常に低い。なお、油浴給油式に対し、循環給油式はポンプで潤滑油を強制的に送る方式である。