原因

  この事故は、寒冷環境下、かつ降雪のもとで気象、航空機の性質を含む数多くの要因が重なり合って起こった。しかしながらそれらは乗務員・管制官・整備員らの判断ミスと規定違反行為によって引き起こされた。

<気象>
外気温:−4℃前後
降雪 :並〜強度

<事故の直接原因>
@ 機体・翼部の積雪
航空機の翼の形は、揚力を合理的に得られるよう精密に設計されており、降雪下で雪や霜が翼部に付着すると翼が生み出す空気の流れに変形が生じ、航空力学的な性能に悪影響を与えて揚力が得にくくなる。特に注記したいのは、事故のあったBoeing737型機特有の問題点として、たとえ少量でも雪や霜が翼の前縁部(リーディング・エッジ)に付着すると、離陸直後に機首が急激に上を向いたり、逆に下を向くなどバランスが損なわれる性質が知られており、それまでに同様の事例が22件報告されていた。事故機は除雪解氷作業の完了から実際の離陸時間までの約45分間に、新たに積もった雪を十分に除かないまま滑走に入った為に十分な揚力が得られなかった上、離陸直後に急激な機首上がりを起こした。

 - 機体と翼部への雪の付着を招いた要因 -

・ 除雪解氷作業完了から離陸までの時間間隔が長引き、その間航空機が低温、降雪のもとにさらされたにも拘らず、乗務員らは離陸前に自ら外に出て積雪の状態を確認しなかった。
・ ゲートから誘導路へのタグ車によるプッシュバックの際に、タグ車操作員の忠告にも拘らず、乗務員はリバース・スラスト(逆推力:プッシュバック時の使用は危険なため禁止されている)を用い、これにより噴き上げられた雪が、機体と翼部に付着した。
・ 離陸の順番待ちの際、直前で順番を待つ他航空機の排気熱を利用して解氷を行う目的で、意図的に前列機の排気筒後ろに機を停止させた。そのため、排気流によって吹き飛ばされた雪が機体に付着した。(規定違反行為)

A ピトー管の凍結詰まりによる速度計器の異常
ピトー管(Pt2 Probe)が雪、または氷で詰まり速度計が正確な速度を表示できなかった。そのため速度計をもとに設定される離陸推力値が実際に必要な値を大幅に下回り、推力不十分で飛行を維持することができなかった。 必要推力2.04EPR(航空機の推力はEPR(エンジン圧力比)値によって表される)に対し、当時の不正確な速度ゲージをもとに設定、算出された各エンジンの推力は1.70EPRしかなかった。

ピトー管凍結の原因
・ 降雪下での除雪解氷作業時に、エンジンインレットへのプラグ、ピトー管カバーなど、水分の浸入を防ぐ措置を取らなかった。(作業マニュアル違反)
・ 地上操作、および離陸に際し、エンジン凍結防止装置を使わなかった。

B 乗務員・管制塔の判断ミス
・ 乗務員は離陸直前に機体、翼の積雪を報告されながら、除雪あるいは離陸中止措置をとらなかった。
・ エンジン計器の異常を認知しながら、乗務員は離陸中止措置をとらなかった。
・ 管制塔は90便の離陸に際し、同滑走路への次の着陸便イースタン1451便との間に十分な時間的間隔がないまま、90便への離陸許可を下した。許可が出た時点で1451便は滑走路からわずか4000フィートの位置に迫ってきており、管制官は90便に対して、"速やかな離陸"を促した。実際90便が離陸する前に1451便は36番滑走路に着陸した。
(註:FAA(米国連邦航空局)の規定では、離着陸の最短間隔は2マイルとなっており、それ以下の間隔での離陸許可発行は強く禁じられている)

Cその他(職場環境)
・ 実際に操縦桿を握っていた副操縦士は、計器の異常に気づき、機長に訴えながらも機長の離陸続行の判断に「NO」と言えなかった。(あるいは離陸を中止しなかった)