経過 |
1961年に長距離地対空ミサイルとして開発が開始されたパトリオット・ミサイル・システムは1973年にレイセオン
・ミサイル・システム社によって完成された。しかし、その後もイラク軍のスカッド弾道ミサイル等に対抗するため
、到達高度を延ばす等改良がなされてきた。 パトリオット・ミサイル・システムは、1式のシステムが数百億円もする高価なものだが、1980年の生産開始以来、 アメリカ軍の他、6カ国に170射撃システム、9,000発が販売されているベストセラーである。その背景には、高い 迎撃性能が評価されたことが上げられ、日本においても航空自衛隊が所有している。同ミサイルは、低空から高空 においてマッハ2(時速約2400km)の速度で飛行する物体を打ち落とすことができる他、相手に位置を探知されな いように移動が可能で、各場所においても数時間という短時間で任務が終了できるように開発された移動式対空ミ サイル・システムである。 パトリオット・ミサイル・システムは主にPhased Array Rader(レーダー装置)、Engagement Control Station(射撃管制装置)、Antenna Mast Group(アンテナ・マスト・グループ)、電源車、Information and Co-ordination Central(情報調整装置)整備車輌がそれぞれ1車づつ、そしてLauncher(発射機) が8車の中隊から成り立っている。 Phased Array Raderは、パトリオット・ミサイル・システムにおける電波探知機であり、 その平面型レーダーから発射するレーダー波を使用して目標物を探知し、その情報をCable Linkを使用して パトリオット・ミサイル・システム中枢車であるEngagement Control Stationに送信する働きをする。 また、同探知機は、およそ100個の目標物を1度に捕捉することが可能であり、最大9基までパトリオット ・ミサイルを制御できる。 パトリオット・ミサイル・システムの中枢車であるEngagement Control StationではPhased Array Raderによって探知された目標物を、その内部コンピュータであるweapons control computerが分析し、その情報を基に、目標物の監視、探知、識別、そしてミサイル誘導の行う他、交戦順序を決定する。 また、Engagement Control Station 3名のオペレーターによって運用され、交戦は全自動、半自動、手動が選択可能である。 Engagement Control Stationは最大16基のLauncherを制御可能である。 Launcherは移動式トレーラーに4連装発射機を装備した発射装置で、VHF やFiber Optic Data Linkを使用してEngagement Control Stationによって制御される無人発射機である。また、ミサイル発射時はバックブラスト*3による 事故防止のため、90m以内は立ち入り禁止となる。 Antenna Mast Groupは伸び縮みが可能なアンテナ・マストを持つ通信装置で、他の部隊等との連絡を取る他、 情報の中継地点としても機能する。電源車は150KW発電機2台搭載したもので、過熱防止のためその2台の発電機 を交互に使用してPhased Array RaderとEngagement Control Station等に電力を供給する。Information and Coordination Centralは同システムの中隊を統制する大隊射撃指揮所であり、最大6個中隊の指揮が可能である。 また、上部防空組織(Higher Level U.S. Command Authorities)や隣接するパトリオット大隊との連絡を取る。 パトリオット・ミサイル・システムが任務を遂行する最初の過程としては、Phased Array Raderよりその上空に向けてレーダー波が発信され飛行物体の探知が行われる。そして、上空に飛行物体がある場合はレーダー波が飛行物体に反射し、Phased Array Raderによって捕捉され、その情報はEngagement Control Stationに送信される。その送信された情報はシステムのWeapons Control Computerのソフトウェアによって分析され、その飛行物体の特徴等からその飛行物体の識別が行われ、もしも、迎撃の必要がある場合は目標物とされる。 目標物の識別が終了すると、その目標物の弾道が割り出され、次に目標物が通過すると推測される空域が計算される。その空域はRange Gate空域と呼ばれ、Phased Array Raderによって捕捉された目標物の飛行状態をWeapons Control Computerが分析して割り出す。そして、割り出されたRange Gate空域を基に更なるRange Gate空域の割り出していく形で徐々にその空域の絞り込みを行う。また、Weapons Control ComputerはRange Gate空域以外、つまり、目標物の追跡に必要な情報以外を除外し、必要な情報のみに絞り込みも行う。 Range Gate空域が設定され、パトリオット・ミサイルによる迎撃が決定されると、Engagement Control StationによってLauncherが選択され、そのLauncherより同ミサイルが発射される。同ミサイルは発射後、Phased Array Raderに捕捉されるまで事前にプログラムされた弾道を飛行、Phased Array Raderに捕捉されると、Engagement Control Stationによってその目標物に向けての最適な飛行経路が指示される。 パトリオット・ミサイルが目標物に接近すると、同ミサイルはその頭部より反射レーダー波を目標物に向けて発信、跳ね返って帰ってきたレーダー波を受信すると、Phased Array Raderを経由してEngagement Control Stationに送られる。そして、その送信された情報はEngagement Control Stationのweapons control computerによって処理され、その情報を基として、Engagement Control Stationは目標物に接近中の同ミサイル弾道の最終修正を行う。この過程を繰り返すことによって、常に目標物に向けての最適な飛行航路が保たれると共に、目標物から遠方にあるレーダー装置を接近するミサイルで追尾精度を補い命中率の向上を図ることができる。この同ミサイルに装備されたレーダー装置を使用した誘導方式はTrack Via Missileと呼ばれている。 |