経過 |
(1)3月31日 雪印乳業大樹工場で午前11時から約3時間停電が発生した。これにより、通常なら数分間で終わるクリーム
分離工程で、脱脂乳が20−30度に加熱された状態で約4時間滞留した。また余った脱脂乳をためておく濃縮工程の回収
乳タンクでも、停電により9時間以上冷却されずに放置された。このため黄色ブドウ球菌が増殖、毒素のエンテロトキシン
Aが大量に生成された。 (2)4月1日 本来ならパイプ内に滞留した原料は廃棄すべきだったが、殺菌装置にかけ黄色ブドウ球菌を死滅させることで 安全と判断、脱脂粉乳を製造した。脱脂粉乳は830袋が製造された。このうち450袋は黄色ブドウ球菌、大腸菌、一般細菌 などの検査で異常が認められなかったため出荷された(450袋のうち112袋が乳製品として使用され、のこりは倉庫に入った)。 380袋は、一般細菌類が同社の自社規制値(1グラム当たり9900個)を1割強超過しており、本来なら製品にできないものであ るにもかかわらず、現場の衛生管理の知識が徹底していなかったため、4月10日に製造した脱脂粉乳の原料として再利用した。 大樹工場ではこれを原料に4月10日には750袋を製造・出荷し、このうち大阪工場が278袋使用している。 (3)6月20日 雪印大阪工場が大樹工場製の脱脂粉乳を入荷。 (4)6月23日 大阪工場が被害の原因となった乳製品を製造(〜28日)。 (5) 6月27日 雪印乳業大阪工場製の低脂肪乳で食中毒症状を起こしたとの最初の報告が大阪市と雪印に入る。翌28日にかけて 発症者の届け出が拡大した。 (6) 大阪市は、有症者の調査、大阪工場の立入検査等を実施し、当該工場製造の「低脂肪乳」について、6月28日に製造自粛、 回収、事実の公表を指導し、6月29日に雪印乳業が会見し本事件の発生を公表、6月30日に大阪市は回収を命令した。この間 も多数の患者が発生し、近隣府県市に及んだ。 (7) 厚生省は、6月30日に大阪市に職員を派遣して関係府県市担当者会議を開催し、同工場が総合衛生管理製造過程の 承認施設であったため、7月1日に大阪市と合同で立入検査を行った。 (8) 7月2日、大阪府立公衆衛生研究所が「低脂肪乳」から黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンA型を検出した。大阪市はこれ を病因物質とする食中毒と断定し、大阪工場を営業禁止とした。また大阪府警が業務上過失傷害の疑いで捜査を開始。5日、被害 者が1万人を超える。6日、雪印乳業の石川哲郎社長(当時)が引責辞任を表明。 (9) 7月10日、大阪市は、有症者の調査、大阪工場への立入検査等の結果に基づき、中間報告をとりまとめ、公表した。 報告があった有症者数は14,780名に達した。 (10) 7月11日 雪印が全国21工場の市乳生産を停止。 (11) 7月25日 厚生省が京都、神戸など10工場の操業再開認める。雪印乳業は10工場の操業を27日から順次再開。8月2日 厚生相が直営20工場に安全宣言。 (12) 8月18日、大阪市は、大阪工場の製品による集団食中毒事件で、同社大樹(たいき)工場(北海道大樹町)が製造した 脱脂粉乳(4月10日製造)から黄色ブドウ球菌の毒素(エンテロトキシンA型)が検出されたと発表した。雪印乳製品の販売 停止広がる。 (13) 北海道は、大阪市の調査依頼及び厚生省の指示を受けて、8月19日から同工場の調査を行い、8月23日に当該脱脂粉乳 の製造に関連した停電の発生、生菌数に係る基準に違反する脱脂粉乳の使用、4月1日及び4月10日製造の脱脂粉乳の保存 サンプルからエンテロトキシンA型の検出等の調査結果について公表した。脱脂粉乳は大阪工場製の乳飲料などの原料とし て使用されていた。 さらに、北海道は、大樹工場に対して食品衛生法第4条違反として同法第23条に基づき乳製品製造の営業禁止を命じると ともに、4月1日及び10日製造の脱脂粉乳について回収を命じた。 (14) 9月20日 厚生省と大阪市の原因究明合同専門家会議、大樹工場製脱脂粉乳を食中毒の主原因とする中間報告。 (15) 9月23日、大樹工場から提出された停電事故対策を含む改善計画書を受理し、10月13日に営業禁止命令を解除し、 10月14日から操業が再開された。 (16) 9月26日 雪印乳業が来年3月期の業績見通しを発表。連結ベースでの経常損益は538億円の赤字に転落。 大阪工場の閉鎖も発表。 (17) 12月20日、雪印乳業の製品による食中毒事件の「厚生省・大阪市原因究明合同専門家会議」は、会議を開き、 最終報告をまとめた。食中毒の原因を大樹工場(北海道大樹町)製脱脂粉乳と断定。同工場で起こった停電の際に、 クリーム分離工程か濃縮工程の回収乳タンクのいずれかで、黄色ブドウ球菌の毒素が発生したとした。 (18) 12月22日、雪印乳業は二十二日、最終報告書を発表した。報告書は食中毒の原因を大樹工場(北海道大樹町) の脱脂粉乳製造過程と断定、3月の停電で大樹工場内の温度管理が不適切になったのが毒素発生の原因とした。また、 大阪市保健所が6月28日に同社に自主回収と社告の掲載を要請したが、報告を受けた専務は29日未明、「やむを得ない ので受け入れるが、社告は納得できない」と保健所への再確認を指示し、掲載が日延べになったと報告した。一方、 同社は衛生面の不備が次々に判明した大阪工場の廃業を22日中に大阪市保健所に届け出、2001年1月31日で閉鎖するとした。 |