【動機】 本事例から、自動販売機という、一般生活においてとても身近であり、通常人命に関わる事故など想定する ことのない機械でも、設計、据え付け、そして誤った利用法など、複数の要因が重なることにより、簡単に 死亡事故を引き起こす可能性を多分に持っている事実を明らかにし、供給者、需要者両者に対する警告 となればと考えた。 |
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【日時】1998年12月13日 【場所】カナダ、ケベック州レノックスビル(Lennoxville) 【発生場所】ビショップス大学キーナー学生寄宿舎1階階段ホール (Bishop's University, Kuehner Residence) 【死亡者】1名 ビショップス大学の学生が、ドリンクを無料で取り出そうと自動販売機を傾けたところ、販売機が転倒、 当学生は重さ約900lb(約408kg)の機械の下敷きになって死亡した。転倒した自動販売機は、ボルト等 によって床、又は壁に固定されていなかった。 (右図:事故のあった販売機と同機種Vendo475の自動販売機
(現在Coca Cola社の自動販売機の使用はなし) |
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【経過】 当時19歳のビショップス大学学生ケヴィン・マックルが、期末テストの終了を祝って寮内でアルコールを飲用後、寮の建物1階の階段ホールに設置された自動販売機から、お金を投入せずに無料でドリンクを取り出そうと販売機を何度か傾けた。その自動販売機が転倒し、マックルは重さ約900lbの機械の下敷きになった。翌朝機械の下から発見された時にはすでに死亡していた。 |
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【詳細】 死因 :窒息死 ※ 体内からは、運転制限値より少し高めのアルコールを検出。 ≪検死官による事故の再現≫ "ケヴィン・マックルは機械を傾けた。(ドリンク)缶は出てこなかった。彼はもう一度傾けたが、 まだ何も出てこない。ケヴィン・マックルは機械を激しく動かし続けた・・・。機械がケヴィン・ マックルの上に倒れた。機械からは缶は出てこなかった。" (原文) Kevin Mackle tilted the machine. No can came out. He tilted it again, still nothing. Kevin Mackle continued to move the machine forcefully… the machine fell on Kevin Mackle … no can fell out of the machine" ≪事故の周辺状況≫ 事故の起きた自動販売機は、周辺からプラスターのかけらが見つかるなど、過去に何度も揺すられた 形跡があり、さらに清掃作業員の証言などから、事故以前にも学生達が、無料でドリンクを取り出す 目的で機械を傾けたり、揺らしたりしていたことが明らかになっている。防犯装置、事故の可能性を 知らせる注意書きはなく、事故防止の為に機械を固定する処置もとられていなかった。 ≪販売機の詳細≫ 製造会社:ヴェンド(The Vendo Company 米国カリフォルニア州フレズノ市) :コカ・コーラ ボトリング(Coca Cola Bottling) サービス会社:ビーバーフーズ(Beaver Foods Canada) ≪仕様≫
(上図:事故の起きた自動販売機の重心位置, 図Sydrose提供) この機種は機体の上部に商品を収納し、重力を利用してドリンクが取り出し口に落ちる仕組み になっているため、機体の重心は極端に上部に偏る。商品が一杯に入った状態では、機体を床 から約20度の角度で傾けると転倒する。事故が発生した時、この販売機にはドリンク缶がほぼ満杯に入っていた。 また事故のあった販売機同様に1982年から1985年の間に製造された同機種は、以前からいくつかの欠陥が認められていた。
さらに製造会社に対し、一台につき約20ドル相当の固定用のキットの配布も要請している。当事故が 起きた時点では、合衆国内のドリンク、スナック、タバコなどを含むほとんどの自動販売機に、揺 すったり傾けたりしないよう注意書きが貼られるようになっていたが、カナダ国内ではまだその処置 がとられていなかった。 警告文の一例:Warning! Never rock or tilt. Machine an fall over and cause serious injury or death. Vending machine will not dispense free product. |
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【原因】 直接的原因は、死亡した学生が自動販売機を不適当に傾けたため。さらに以下の理由から、転倒を防ぐことができなかった。
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(上図:自動販売機の転倒図解, 図Sydrose提供) | ||||||||||||||
【背景】
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【対策】
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【知識化】 たとえ安全と思われる製品であっても、市場に出す段階で、ありとあらゆる状況での危険の可能性を考慮し、 事故を前もって防ぐ体制を整える必要がある。
教育の場においても、危険性をはらむ行動を見過ごさない、防犯の徹底を怠らない姿勢が、生徒に対して 学校がとるべき責任であると言える。 |
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【後日談】
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【情報源】 http://www.cokemachineaccidents.com/ (現在利用できず) |
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【被害者の家族による責任の追及】 ≪コカコーラ社、VENDO社≫
転倒事故の可能性がありながら、機械を固定していなかった。 ≪ビショップス大学≫ 事故以前に学生が無料ドリンク目的に販売機を傾ける行為を目撃していながら、適切な対応をしなかった。 ≪検死報告≫
※ なお当サイトcokemachineaccidents.comは、この事故が被害者であるケヴィン・マックルが、 フリードリンク目的で販売機を不当に扱った犯罪の結果であるとして、他のウェブサイトを含むメディアで 多くバッシングを受けた経緯も明記しておく。 |