【動機】
本事例は、放射性物質等の危険物の処分又は管理を怠って放置した事が、発端で起きた事故である。 アイソトープによる事故は人々の日常生活の場で起きており、死亡者も出ている。 この事故では一般市民250名が被爆し、4名が死亡するに至った。 |
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【日時】1987年9月18日(推定) 【場所】ブラジル、ゴイアニア市 【発生場所】廃品回収場3ヵ所と住宅 1ヶ所の全4ヶ所 【死者数】4名 【被爆者数】250名 【汚染範囲】ゴイアニア市から160Km範囲 (上図,Sydrose提供、公開可) |
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市の中心近くにあった癌治療病院が移転して廃墟となった後、
内部に未だアイソトープのセシウム-137が入ったままの治療用の放射性装置が放置されたままとなっていた。 事故当時の放射能は50兆ベクレルと予測されている。 このセシウム-137入りの容器が盗まれて、廃品回収業者に売り渡された後、 このセシウム-137を体に塗ったり飲んだりした事が原因で250名が被爆し、4名が死亡すると言う事態に至った。 |
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【背景】 セシウムは30年半減期でβ崩壊する物質で、β崩壊した後に半減期2.55分のバリウム-137mに変わるが、 バリウム-137mはガンマ線を放出しながら安定化する。セシウム-137は青白いチェレンコフ光を発しながら、 β崩壊をするが、ガンマ線の力が弱いので現在では治療に使用されていない。 セシウム-137は塩化セシウムの分子で使用される為、水に対しての溶解性があり、 セシウム自体アルカリ性が高くアニオンとの共有結合をして結びつく。 従って、今回の場合も汚染されてから一週間以上経っていた事が原因で、 プルシアン・ブルー1日3グラムの治療でもセシウム除去は困難であった。 |
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【原因】 ゴイアニアにあった癌治療病院にはコバルト-60とセシウム-137が設置されていた。 この病院が廃院になった1985年に、病院側はブラジルの政府機関にコバルト-60しか、 申請しなかったが、ブラジルの政府機関はセシウム-137の存在の確認及び警告を2度に渡り病院関係者に促したが、 返事を得られなかったそうであった。 ブラジル政府機関の不手際、病院側の対応の悪さが、今回の事故を引き起こした原因であると言われている。 |
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【対策】 ブラジルでは、使用済みの廃棄放射性物質の貯蔵庫を新しく建設し始めました。 又、ブラジル政府機関の放射性物質に対する規制の見直しにも取り組み始めました。 |
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【知識】 放射性物質取り扱いの専門の施設での事故と異なり、一般の人々を巻き添えにした事故では モロッコで1984年に起きた事故についで、今回のブラジル・ゴイアニア市の事故は二番目に大きな惨事となった。 一般の人々には放射線の知識が無く、こう言った事故に巻き込まれる可能性が高いと思われるが、 あくまで、放射性物質や放射線発生装置を取り扱う専門家が注意をして、 放射性物質は放射線を遮ることの出来る容器に入れて、一般の人が近寄れないよう管理するべきである。 今回のように、移転した病院の跡地にそのまま放置しては成らないのは言うまでも無い。 放射性物質を扱う施設の管理者及び、専門家達は、放射性物質による事故の怖さを良く知って、 法令の規則をまじめに守る事が、事故を防ぐ唯一の方法である。 |
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【情報源】
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