【事例発生日付】 1995年7月29日 【事例発生地】 カナダ、マニトバ州 【事例発生場所】 ラピッドシティーの南東3キロメートル、無人地帯1995年、7月29日早朝の6時前、 6本ある地中天然ガスパイプラインのうち、1本が破裂、火災が起こった。 同パイプライン所有社の安全システムがうまく動作せずさらに 1本のパイプラインも続けて破裂。流れているガスをうまく止められずに火は長時間にわたって炎上、 地面に長さ500メートル以上、幅、深さ共に200メートル近い穴を開けた。 カナダ輸送安全局、パイプライン所有社の両者は事故後、安全装置、および体制を見直した。 (右図:天然ガスのパイプライン破裂事故があったラピッドシティ,Sydrose提供) |
【動機】 人の介在を要する安全装置も、肝心の操作員がパニック状態にあると、 思った通りの操作を期待できないものである。本事故は、およそ無人地帯で起こったため、 大惨事には至らなかったが、この事故から、パニック状態を考える緊急体制を考えるようにしたい。 |
【事象】 トランスカナダパイプライン社は、現在従業員2,700名規模、 北米大陸を中心に、パイプラインを使った天然ガスの輸送、処理、販売を行っている。 株価履歴を見るとこの事故が特に経営に影響をもたらした形跡はなく、前後を含めて緩やかな上昇を続けている。 事故は、応力腐食割れが原因でパイプ壁が破裂、爆発、火災が起こった。 現場作業員がいたがうまく緊急停止を作動できず、また、200km離れた地区管理施設でも遠隔で緊急停止を試みたが失敗。 破裂箇所の両側それぞれ100kmのところにあるバルブを遠隔で閉じることでようやくガス流を止めたが、 1本目の火災からの熱で2本目が誘爆。しかしこれは遠隔で近くのバルブを閉じ、数時間後に火災を鎮火した。 事故後、様々な安全の観点から見直しが行われた。 |
【対処】 現場作業員が緊急停止を試みるも、うまく作動させることができなかった。 事故後に調べると緊急停止ボタンに問題はなく、パニック状態にあり、 かつ回りの騒音が通常よりかなり大きく、安全システムの作動音が聞きにくかった 作業員の操作ミスであることがわかった。 有人の地区管理施設から遠隔で緊急停止、さらに主バルブを閉じようとしたが失敗、 結局、同パイプの両側100km離れた地点の主バルブを閉じて破裂箇所の隔離に成功。 その後、2本目のパイプがまた破裂したが、地区管理施設から遠隔で破裂箇所すぐ近くの主バルブを遠隔で閉じることに成功。 |
【対策】 ガス輸送会社では、自社のパイプラインを緊急に見直し、2本が近すぎないか、応力腐食割れはないか、原因となったポリエチレンテープが使われていないかなど、検査、修理プログラムを加速させた。さらに緊急時の対応手順を見直し、さらにシステムのソフトウェアも見直した。 |
【背景】 心理的背景については、特に記述がないが、情報源からの事実記述で推測すると、応力腐食割れについて検査や防食電流を流しているという油断があったのではないだろうか。ポリエチレンテープの問題が良くわかっていなかったということもあり、本事例は知識の発見のため、通らなければいけなかった経験の一つだろう。幸い、死傷者は現場作業員が軽症を負ったにとどまった。この事例をなるべく多くの人に知ってもらい、同じ原因による事故を防ぎたいものだ。 |
【知識化】 緊急事態の対応では、いくら完全に考えたつもりでも、 実際に緊急な状況に遭遇してみると周りの状況が余りにも通常時と違い、人の判断を誤らせることがある。 また、そのような状況に陥ると人はパニックを起こしやすい。現実的な訓練、 なるべく本当の緊急事態に近い状況を経験させるなど、何らかの工夫が必要だ。 |
【後日談】 事故で第5ラインも損傷していた。各ラインの生産復帰は、 第5ライン: 1995年8月 1日 18:45 第3ライン: 1995年8月 1日 06:45 第4ライン: 1995年8月12日 17:46 |
【情報源】
以上 |