旅客フェリー、コロンビア号が航行中、エンジン制御室の主配電盤より火災が発生し、 主推進力と電力を失い、自力で航行できなくなり漂流した。火災による負傷者、 死亡者は出なかったが、船体に2400億円の損害を与えた。 |
【日時】2000年6月6日 【場所】米国アラスカ州 【発生場所】フェリー コロンビア号 【全経済損失】2400億円(20億ドル) 【コロンビア号の概要】 長さ 129m(418ft) 船幅 26.3m(85.1ft) 深さ 7.4m(24.0ft) 総重量 3946トン 排水量 7745トン 馬力 12340馬力 【動機】 定期的な点検を十分に行わなかったために、不具合を発見できず、大きな損害を出した事例である。 動力源や電力供給など、安全な運行のために不可欠な系統への保守整備の重要性を改めて認識させられる。 |
【事象】 2000年6月6日、コロンビア号は9時15分にJuneauの北部のAuke Bay Terminalを出航し、Sitkaへ向かっていた。 この航路は定期便であり、航行時間は8時間半を予定していた。 このときコロンビア号には乗客434名、密航者1名、乗組員63名が乗船していた。 同日、12時07分、エンジン制御室の主配電盤から火災が発生し、主発電系統が使えなくなったため、 非常用発電機に切り替わった。コロンビア号の消防隊および通報を受けた湾岸警備隊の消防隊が駆けつけ消火にあたり、 火災は14時25分に鎮火した。その間エンジンの不調などによりコロンビア号は主推進力と全電力を失い、漂流した。 この火災による負傷者はなかったが、3名の乗客が既存の身体症状の悪化を訴え、Juneauの病院にヘリコプターで搬送された。 コロンビア号の乗客は、救援の要請を受けた旅客フェリー、タク号に乗り換え、同日夜8時30分に、目的地Sitkaに到着した。 漂流したコロンビア号は曳航され、翌日7日、朝8時45分にSitkaに到着した。 この火災で、船体の修理費として2400億円の損害が出た。 |
詳しい【経過】については
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【背景】 コロンビア号の保有者であるAlaska Marine Highway Systemの運行規定によると 各フェリーの技術部が主配電盤および非常用配電盤の整備の内容や時期についての決定権をもっていた。 火災の起きた主配電盤の製造会社のマニュアルには、1年に1回あるいは船体の分解点検時に配線の緩み、 異物が無いことを確認することが記されていた。 コロンビア号の主任技師は事故発生以前に、主配電盤や補助発電機への保守整備をしたことはないと証言し、 整備記録は残っていないが1995年に主配電盤の清掃を行ったことを記憶していた。 さらに配線の緩み等の点検が最後にいつ行われたかはわからないと述べている。 コロンビア号は冬期にドック整備をしていたが、主任技師によればその時期になると会社側が人員を減らすため十分な人手がなく、 必要な保守整備ができなかったことも述べている。 コロンビア号は電気回路配線の接触不良、過負荷、負荷不均衡を点検するために、赤外線サーモグラフィによる検査を、 1年に1回外部の業者に依頼していたという。しかし検査を航行中に行っていたため、検査自体が難しく、 またコロンビア号の主配電盤は壁に配置されていたため後部からアクセスができず、 十分は検査ができていたとはいえない。 |
【対策】 NTSBは事故報告書を作成し、コロンビア号の保有者であるAlaska Marine Highway Systemに次のような勧告を出した。 1. 配電盤の整備計画を確立し、赤外線サーモグラフィによる検査、および接続部分の検査を念入りに行うこと。 2. 従来から使用されていたコンピューターを使用した整備計画システムに、配電盤の年次検査を組み入れること。 3. 外部の業者が船体に行った整備や修理が適切であることを確認受理するための、手順を改定すること。 4. エンジン室での火災への対処法、乗組員への訓練等、包括的な防災計画を確立すること。 5. エンジン室で火災が起こった場合、エンジン室の電話が使えなくなってもブリッジで警報がなるような装置を装備すること。 |
【対処】 エンジン制御室の主配電盤から火災が発生したという連絡を受けた船長は、船内の消防隊を現場に派遣した。コロンビア号の通信を傍受していた湾岸警備隊の警備船Anapaca号もまた、消防隊を派遣した。火災は発生から焼く2時間半後に消し止められた。 コロンビア号の乗客をタク号に乗せ換えるために、 乗組員がアルミ製の足場を利用してコロンビア号とタク号のあいだに橋を渡した。乗客はこの橋を、救命胴衣を着用し、歩いてタク号に乗り換えた。タク号は 6日20時30分にSitkaに到着した。 コロンビア号は、タグボートに曳航され、Sitkaにたどりついた。 |
【知識化】 *安全性を維持するためには、動力源、電源等必要な不可欠な系統への適切な保守、整備、 および点検を確実に遂行することが重要である。 *外部の業者に保守、整備、および点検作業を依頼することが多いところでは、 発注した作業が適切に行われていることを確認する手段が必要である。 |
【情報源】 |