失敗百選 〜歌舞伎町雑居ビル火災(2001)〜

【事例発生日付】2001年9月1日

【事例発生場所】東京都新宿区歌舞伎町

【事例概要】
新宿の雑居ビルの3階麻雀店エレベータ付近から出火し(出火原因は不明)、4階飲食店に延焼拡大した。3階80平方m、 4階80平方m、で延焼防止。出火時3階には客と従業員19名がいて3名が脱出したが、非常階段にロッカーなどが置かれて いたり、自動火災報知設備が作動しないなどで、残り16名が死亡した。4階には客と従業員28名いたが全員死亡した。

【事象】
新宿の雑居ビルの3階麻雀店エレベータ付近から出火し、4階飲食店に延焼拡大した。3階80平方m、4階80平方m、で延焼防止。出火時3階には客と従業員19名がいたが、3名が脱出したが残り16名が死亡した。4階には客と従業員28名いたが全員死亡した。

【経過】
9月1日、0:59に「明星ビルで火災」の一報が東京消防庁に119番通報が入った。 「3階から人が落ちた」という緊急要請の電話であった。またビル内からの電話は4本で、以下のとおりであった。
1:01、4階の飲食店から女性の声で、「歌舞伎町なんですけど、火事みたいで煙がすごいんですよ、 歌舞伎町一番街のスーパールーズです。早く来てください、出られない、助けて」
1:03、女性の声で、「火事です、今現場いっぱい、4階、もう避難できないんで早く 助けてください。10人ぐらい。お願い」
1:05、(パニック状態、物が倒れる音、バタバタという音)「すぐ来てください、 もうかなり煙がまわっているんです、お客さんも女の子も全部、まだ到着しませんか、早く、かなりいるんです」
1:07、(悲しそうに、悲鳴に近い声)「火事です、4階のスーパールーズ。かなりいる、 逃げられない、20人ぐらいいる」 麻雀カジノ店「一休」がある3階のエレベータホールから出火したものとみられる火は、3、4階の階段の防火扉が開放 されていたため、瞬く間に4階のキャバクラ「スーパールーズ」まで一気に煙と熱風が駆け上ったものと推定される。 熱や煙を感知して火災を知らせる自動火災報知設備は、作動した形跡はなかった。 出火時3階には客と従業員19名がいたが、3名が脱出したが残り16名が死亡した。4階には客と従業員28名いたが全員死亡 した。3名が負傷した。
【原因】
@ 火元は激しく燃えていた3階のエレベータホール防火戸付近から4階への上り口付近とみられるが、 出火原因については、放火説などあるが、不明である。
A 犠牲者が多くでたのは、階段にロッカーなどが置かれていて、避難階段の役割を果せなかった。火災の発生時にも 防火シャッターが閉まらず、階段が煙突のようになり、火の回りが早かった。
B 4階には入り口の西側(道路側)には避難用の扉が、東側と南側には窓があったが、南側の窓は不燃材がはめこ まれており、内側からは開けられない構造になっていた。4階の死亡者はいずれも一酸化炭素中毒によるものとみら れている。火元の3階も3ヵ所の窓があったが、普段から施錠されていた。
C 3階には避難器具や消防法で設置基準が定められている誘導灯が設置されていなかった。
D 消防署の定期立入検査での指摘が無視されていた。また、ビル全体および各テナントごとに防火管理者の選任、 消防計画の提出、消火訓練などが実施されていなかった。
【対処】
新宿消防署と警察署は、出火場所と出火原因の調査に着手した。ガスメータが落下しており当初ガス管からガスが漏出していたとみられたが、ガス管とメーターをつなぐねじが緩んだ痕跡はなかった。
【対策】
不明
【背景】
出火したビルは耐火4階建て地下2階地上4階の建築面積83平方m、延べ床面積498平方mの複合用途いわゆる「雑居ビル」で、1985年11月に完成した。
3、4階の店舗は、いずれもビル所有会社と賃貸借契約を結んだ名義人が、店の経営者に「又貸し」していた。前のビルの所有者は、テナント経営者に「避難器具の設置」や「階段に物を置かない」などの警告や指導をたびたび行なっていたが、ビル所有者が変わってからは、このような防災面がおろそかになっていた。屋内階段は1ヵ所でかつ狭く、3階から4階の階段はロッカーが多数置いてあった。
【知識化】
@ 雑居ビルには危険がいっぱいと考えて、常に非常口などの確認が必要である。
A 強制力のない指摘は無視される。
B ビルの又貸しやオーナーの変更で、安全に対する意識や管理が低下してしまう。
【総括】
不特定多数が出入し、複数の用途に使用される建物は複合用途防火対象物(いわゆる「雑居ビル」)として、消防法で厳しい規制を定めている。しかし、ビルの関係者として、所有者、管理者、占有者、又貸しなど複雑な関係となり、実際には徹底されないのが事実のようである。この雑居ビルも1999年10月の新宿消防署の定期立入検査で、9項目にわたる消防法違反容疑を指摘していたのにもかかわらず、ほとんど改善されていなかった。
営業停止などの強制力が必要と思われるが、さもなければ自己防衛しかない。

以上