失敗百選 〜小学校で防火シャッタ誤作動〜

【事例発生日時】1998年4月14日

【経過】
8時10分頃、浦和市立別所小学校の校舎1階東側廊下と2階への階段の間の自動防火シャッターが突然降り始め、2階の教室に向かう 途中の3年生の男児(8歳)がシャッターをくぐりぬけようとして、ランドセルが引っかかり、うつ伏せの状態で首を挟まれた。2階の職 員室で感知器のブザーを聞いて駆け付けた教員2人がシャッターを持ち上げようとしたが動かず、応援を呼び数人で鉄パイプや椅子 を使ってシャッターをこじ開けて児童を救出した。事故が起きたのは1時間目の授業の前。
8時半、救急車が到着し、男児は病院に運ばれたが意識不明の重体。
18時40分、被害者の男児が収容先の病院で死亡。

【訴訟】
1998年12月25日 、死亡した男児の両親は、「作動すべきでないときにシャッターが作動したのは管理する浦和市の落ち度。 別所小学校では防火訓練でシャッターを作動させたことがなく、非常停止の方法などの構造を理解していないなど、市が安全 管理義務を怠った」として、浦和市に約1億900万円の損害賠償を求める訴えを浦和地裁に起こした。

【関連事例】
4月1日から16日までの間に埼玉県内1,441の公立小中学校(自動防火シャッターは833校に、防火扉はほぼ全校に設置)で防火シャッターの誤作動が今回の事故を含め29件、防火扉の誤作動が61件発生、1日に3件誤作動した高校が2校あった。計90件のうち、事故の起きた14日に36件が発生。13日が24件、15日が18件(県教委が県内全92市町村教委を通じて調査・22日発表)。
東京都内の区市町村立小中学校と都立学校計2,328校で、1995年以降防火シャッターや防火扉の誤作動が310件発生、結露やほこり、虫や生徒のいたずらが原因。うち2件で生徒がけが。1校の防火シャッターで誤作動が4件発生の事例もあった。(東京都教育庁22日発表)
横浜市立の小中高校全513校で14日を挟む3日間で24校の27件の自動防火シャッターが誤作動。(横浜市教委23日発表)
消防庁が2622施設にアンケート調査。1996年に1度でも誤作動があったのは34.6%。時間的に6時から20時の間が多い。調理の煙、工事の粉塵、自動車の排ガス。人間の活動が原因の半分くらい。気象や劣化がそれに続く。

【対策】
1. 浦和市教委は、市立小中学校63校の現在の基準に合っていない古い感知器の交換を決めた。
2. 浦和市のある小学校では湿度の高い時期、シャッターの下に机を置くようにした。
3. 建設省は防火シャッターの安全性について、自重降下式が最適かどうかなど見直しを始めた。
4. 日本シャッター工業会は都道府県教委に、「作動しているシャッターは無理にくぐらない、シャッターの降りる位置にラインを引く」などの安全対策を記した文書を配布する方針(5月4日報道)。

<NHKの対策コメント> (NHKクローズアップ現代 1998.4.27)
1. 防火シャッターに「くぐるな」と書く。
2. 防火シャッターの位置を誰にでもわかるよう表示する。
3. ものが挟まったら止まるようにする、あるいは止めることができるスイッチをつける。
4. 人が集まる施設には防火シャッターではなく防火扉を設置する。防火カーテンの採用も考えられる。
 

【電動シャッターの挟まれ事例】




以上