失敗百選 〜ジェットバスで女児が溺死〜

【事例発生日付】2000年9月21日

【事例発生場所】 東京都調布市

【事例概要】
ノーリツ製の気泡噴射式浴槽(ジェットバス)で入浴中の女児(6才)が溺れた。吸水口に髪の毛など吸い込まれたためであった。

【事象】
ノーリツ製の気泡噴射式浴槽(ジェットバス)で入浴中の女児(6才)が吸水口に髪の毛など吸い込まれ溺れた。
【経過】
2000年9月21日夜、ノーリツ製の気泡噴射式浴槽(ジェットバス)に小1女児(6歳)と弟(2歳)が入浴していた。弟が先に 出た後、30分経っても出てこなかったので、母親が見に行ったところ、ジェットバスの吸い込み口に髪の毛をからませた 状態で、うつぶせで浴槽の底に沈んでいた。

以下は本事故以前の経過
1990年10月〜2000年、髪の毛を吸い込まれた事故20件(うち水死3件)、足など体の一部を吸い込まれてあざが残ったり、 けがをした事故10件が発生。内訳はノーリツ12件、松下電工10件、TOTO4件、日立化成工業3件、INAX1件。(通産省が 同種製品の製造メーカー23社に対して行なった緊急調査による)
1992年8月、福岡市内で小学1年女児(7歳)が、INAX製のジェット噴流バスに入浴中、吸水口に髪の毛を吸い込まれ水死、INAX はカバーを穴があいたタイプに改良し、それまで販売されていた約9,000台について交換していた。
1993年以降、ノーリツなどメーカー23社は、事故防止を目的に浴槽のお湯を吸い込む吸水口のカバーに多数の穴を開け水流 を分散する改良型の製造・販売に切り替えていたが、それ以前に販売したものは交換しなかった。
1997年4月に日立化成工業が販売した改良型の製品でも、中部地方の小学3年女児(9歳)が髪の毛を吸水口に吸い込まれる 苦情があった。
【原因】
1.吸込口の面積が狭く吸引力が大きかった・・・・・事前検討不足
このジェット噴流バスは、底から約9.5cmの高さにある吸水口(直径9cm,同径のカバー付)から湯を吸い込み、気泡を混ぜて 浴槽側面の噴射口から噴出する仕組みであったが、吸込口の面積が狭く吸引力が過大だった。

2.対策品と交換されていなかった・・・・・安全意識不良
現行品は改良型となっていたが、以前に販売したものは交換していなかった。 危険があるにもかかわらず、対応しなかったのは経済的なコスト負担を回避したものと考えられる。・・・・・コスト優先

3.子供たちだけによる入浴・・・・・仮想演習不足
子供たちだけでは、万一の場合の対応(ジェット噴流の停止など)が困難である。
【対処】
2000年12月、TOTOや松下電工、INAXなど28社は、「ジェット噴流バス協議会」を設立し、事故原因の分析や安全基準づくり を進めた。
部品交換などを通じて、販売済みの商品の事故防止に取り組む一方、メーカ間の技術協力や情報交換を進めて、2001年度中に 事故の起きないジェットバスを作るために業界統一基準を作る方針を打ち出した。
【対策】
不明
【背景】
ジェット噴流バスは、浴槽の給水口から湯を吸い込み、壁面の数カ所の噴出口から気泡混じりの湯を噴き出す仕組みの 風呂です。この噴流を入浴者の背中や足腰などを当てる装置で、1980年代に登場しました。マッサージや温浴効果を期待して、 家庭用の浴槽として普及し、当時までに家庭用でおよそ40万台が販売されていました。  
【知識化】
@ 重大不具合が即リコールとなるとは限らない。
A 対策品でも万全とはいえない。
B 使い方を誤れば事故に直結する。 子供は潜ったりなど、大人がやらない行動する場合がある。
C 万一のときに対応できる体制が重大事故への拡大を防止する。
【総括】
事故後、ノーリツの社長は「調布市の女児の事故を受けて調べた結果、類似の事故があったことが分かった。現場は 偶発的な事故と思い、本社へ報告しなかったと思われる。認識が甘かった。」などとコメントしている。
ノーリツ広報室は「当時は業界全体で対策に乗り出す動きはなかった。判断が甘く反省している。」とし、交換するカバーも 使い方を誤れば百パーセント安全とは言い切れない。カバーをはずしたまま運転したり、子供だけで入浴させたりしないよう 注意して欲しい。」としている。

以上