【事例発生日付】1997年10月23日 【事例発生場所】神奈川県 藤沢市公園 【事例概要】 市公園のゆりかご型ブランコで遊んでいた女児(9才)がブランコに引きずられ転倒し右足を挟まれ骨折した。 責任は利用側か、提供側か、で大きな問題を提起した。 【事象】 市公園のゆりかご型ブランコで遊んでいた女児(9才)がブランコに引きずられ転倒し右足を挟まれ骨折した。 |
【経過】 藤沢市が管理する「みどりの広場」で,4人乗りの箱ブランコに友人1人を乗せ,別の友人と両側から押し合って遊んでいた女児(9)がブランコに引きずられ仰向けに転倒,揺れ戻ってきたブランコ底部と地面の間(11〜22p)に右足を挟まれ大腿骨折。 |
【原因】 1.箱ブランコの構造的欠陥・・・・・仮想演習不足 ブランコの底と地面は約22センチしか空いていないため、挟まれて重大な障害を被る危険な構造・形状であった。 2.本人または保護者の不注意・・・・・注意・用心不足 3.箱ブランコ設置の妥当性・撤去の遅れ・・・・・情報伝達不足 同種の事故が全国で相次いでおり、安全確保の措置を講じなかった |
【対処】 けがをした本人当時9歳だった女児の「誰かがちゃんと言わないと、また事故は起きる。お母さん、私が提訴するよ。」 との決意から箱ブランコの安全性を問う裁判は始まった。 「遊び方が悪い」と子供に責任を押し付けようとする行政やメーカの姿勢への反発からだった。裁判で箱ブランコの 危険性を立証しようと母親は、全国で起きた箱ブランコ事故の実態を調べるため、国会図書館に通い、新聞記事を拾って は当事者に事実を確認し、データを積上げた。このデータが基となり、1999年には全国組織「箱ブランコ裁判を考え る会」が発足。支援者は約200人になった。 ホームページなどで、道具の危険性を訴え自治体の箱ブランコ撤去のきっかけになった。 |
【対策】 2002年3月、国土交通省は、「安全な道具」のための初のガイドライン「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」 を作成、これを受けて業界団体が自主基準作りに乗り出した。 社団法人日本公園施設業協会(以下「JPFA」)では、上記に沿って、「遊具の安全に関する規準(案)JPFA・S:2002」 (以下「規準(案)」)を現時点における経験や知見を結集して規準(案)を策定取りまとめ、公表することにより、 規準(案)が遊具に係わる方々に活用され、遊具の安全性の向上に役立てられることを狙った。 |
【背景】 国土交通省の2001年度の調査では、全国の約1万3000台の箱ブランコが設置されている。 文部科学省は、幼稚園や小学校などに設置してある箱ブランコによる幼児・児童の事故発生状況を調査した。これによると 1998年から2000年度で死亡事故を含め、287件起きていることが分かった。 |
【知識化】 @ 使用していて発生すること(例えば転ぶことなど)に対する配慮が必要。・・・・・仮想演習が必要 A 事故情報による予防的対処は意外と取られない、または遅い。 B 保護者は常にリスクがあることを認識した上で利用する。または危険を想定して、 利用しない。 |
【総括】 裁判は、地裁では被告の製造会社の過失「ブランコの底と地面は約22センチしか空いて いないため、挟まれて重大な障害を被る危険な構造・形状」および市の過失「当時から 同種の事故が全国で相次いでおり、安全確保の措置を講じなかった」を認めて、原告側 女児の勝訴となったが、高裁では事故の状況について「客観的な目撃者がいない上、本人 も衝突時や前後の記憶がなく、確定は困難」との判断、「この事故ではメーカや市の責任は 問えないと認定、さらに「自ら把握できる危険は、本人や保護者が防止、回避義務を負う べきだ」と指摘、「ブランコを揺らしていた本人が予期しない原因で事故が起こったわけで なく、ブランコに通常の安全性が欠けていたと言えない」と、逆転敗訴となった。 しかし、裁判での判断はともかく、どのように事故が防げたかとの観点から検討したい。 以上 |