【事例発生日付】1997年3月13日 【事例発生場所】東京都大田区羽田空港上空 【事例概要】 青森発JASエアバスA300型機が羽田空港に進入中、複数の操縦計器異常が発生。搭乗客のビデオカメラの電磁波が原因と推定される。 【事象】 青森発JASエアバスA300型機が羽田空港に進入中、複数の操縦計器異常が発生。 |
【経過】 夜間、青森発JASエアバスA300型機が羽田空港に進入中、「水平位置表示計」、「姿勢指令指示計」、「グライドスロープ」の針がぶれだし、地上無線局からの距離表示も消失したため、計器着陸装置を使用した進入は不可能な状態になった。 天候は良く,地上の灯火をたよりに進入を続行した。 客室乗務員が調べたところ、乗客の1人がデジタルビデオカメラを動かしていたので、そのスイッチを切ったところ、全計器は正常に戻り,羽田空港に無事着陸することができた。 |
【原因】 乗客の1人が動かしていたデジタルビデオカメラから出た電磁波が、窓を通り抜け、機外にあるアンテナ (ジャンボ機には無線通信用や電波航法装置用など20本程度のアンテナがついている)が受信したためと思われる。 |
【対処】 JASで調査したが、詳しい原因は解明できなかった。 |
【対策】 機内での電子機器使用の問題は、運輸省の外郭団体、航空振興財団の委員会で調査研究が続けられているが、 電磁波と計器異常との因果関係は明確になっていない。 |
【背景】 携帯電話やパソコンなど電子機器による操縦システムの異常は国際的に問題になっており、 米国などで機体が急激に傾いたなどの事例が報告されているが、今回のように、深刻なケースは国内では初めてである。 また、携帯電話や送電線などの電磁波の人体への影響もいまだに明確になっていない。 |
【知識化】 「疑わしくは罰す」事故発生に寄与する疑いのある要因は、排除するべきである。 少なくとも因果関係が明確になるまでは、安全第一であり、機内での電子機器使用を禁止すべきである。 |
【総括】 日本で初めて、電子機器の電磁波によるとみられる操縦システムの異常が発生した事例であるが、 因果関係は明確になっていない。しかし、明確になっていないからといって放置しておくことはできない。 ヘッドフォンカセット,AMラジオ,ゲーム機器などからは計器に影響を与えるほどの電磁波は出ていないという 実験結果もあるが、早急な解明、特に数値的なレベルの明確化が望まれる。 以上 |